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リブラの安心掲載記事

治療薬の併用でアルツハイマー病に有効と発表された脳ビタミン

※駅ビル医院せんげん台院長 周東 寛

アルツハイマー病の栄養療法の一環

日本では、高齢化社会を背景に痴呆症がふえています。その二大原因として知られるのが、脳血管障害とアルツハイマー病です。後者は、脳の萎縮が進み、記憶のほか、判断、理解、思考といった広範囲の脳の機能が低下する病気で、いまだ決定的な治療法は見つかっていません。最近は、その治療薬として、脳の神経伝達物質をふやす薬も開発されていますが、人によって効果に差があるのが難点です。

私は、こうしたアルツハイマー病の治療では、こまめに話しかけたり、カラオケなどの娯楽の場に引き出したりして、脳に刺激を与える生活療法と、脳の栄養になるものを十分にとる栄養療法が重要と考えています。そして、栄養療法の一環としておすすめしているのが、「脳ビタミン食品」の摂取です。

脳ビタミン食品とは、ビタミンB12をはじめ、B1・B2・B6・葉酸などのビタミンB群、そのほかの有用な成分を豊富に含む栄養補助食品です。とくに、ビタミンB12は、1包中に1500マイクログラム(1マイクログラムは百万分の1グラム)という従来の栄養補助食品とは、けた違いの量が含まれています。

もともとは悪性貧血を防ぐビタミンとして知られるビタミンB12ですが、最近では「脳のビタミン」「神経のビタミン」と呼ばれ、脳神経系に深くかかわることがわかってきました。ビタミンB12には、脳の神経線維同士の連絡部分である「シナプス」を修復する作用があるのです。同時に脳の血流を良くする作用もあり、痴呆症の改善に役立つ栄養素として注目を集めています。

元京都大学医学部の亀山正邦教授は、健康な人と比較して、痴呆患者の脳では、ビタミンB12が4縲鰀6分の1にへっていたと報告しています。脳の働きとビタミンB12との深い関係を示す研究結果といえるでしょう。

知能評価が痴呆から非痴呆に向上した

それ以外のビタミンB群にも、B12とともに、脳神経や脳の血流をよくする働きがあります。これらを豊富に含む脳ビタミン食品は、アルツハイマー病の改善にも役立つことが期待されます。実際、私の患者さんで脳ビタミン食品の摂取によって、アルツハイマー病が改善されたと思われる例があります。

これについては、今年の10月1縲鰀2日に東京・品川で開かれた「栄養とアルツハイマー病に関する国際シンポジウム」で発表しました。その発表の内容は、国内外の参加者の注目と関心を大いに集めました。

シンポジウムでは、脳ビタミン食品の概要と、その摂取によってアルツハイマー病が改善されたMさん(66才・男性)の症例を紹介しました。元来、活動的で人当たりのよかったMさんですが、ある時期から活動性が低下し、表情が乏しくなり、記憶力や判断力が落ちてきました。どうもおかしいと受診したところ、アルツハイマー病と診断されたのです。

当院で、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(いくつかの質問に答えてもらい、痴呆の有無や程度を診断する)を行った結果は、痴呆と判断される20点でした。またMRI(磁気共鳴断層撮影検査)では、脳の両側に、神経細胞の萎縮を示す黒い部分が認められました。

そこで、Mさんが摂取していた薬はいっさい変更しないまま、脳ビタミン食品を1日に2度摂取し続けてもらったのです。

すると、2ヵ月後の知能評価スケールでは28点、その2ヵ月後は26点となりました。いずれも「非痴呆」と診断される数値です。それとともに、脳のMRI画像では、黒い部分が縮小し、正常な像がふえてきました。

ほかにも、脳ビタミン食品がアルツハイマー病の改善に役立っていると思われる症例があり、現在、分析を進めています。

先にふれたアルツハイマー病の治療薬は、人によって効き方に差があります。しかし、この薬が効きにくい場合に脳ビタミン食品を併用すると、効果が現れやすくなることもわかってきました。脳ビタミン食品は、アルツハイマー病の治療に光明を与えるものではないかと期待し、研究を進めているところです。